おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

安宅和人著「シン・ニホン」

 今更感があるけど、本書を一冊通して読んだ事がまだなかった。最近ブログ用にどういう本を読もうか悩んでいたので、何もせず時間を無駄にするくらいなら、ということで本書を改めて読んでみた。本書「シン・ニホン」は、2020年に発売された本だが、本書の内容自体はそれ以前にも様々なところで発表されている。例えば、2016年のTedx Tokyoの動画もあるし、2017年の経済産業書での会議のpdfもwebで公開されている。一方で、本書のはじめにこの本を出すことに至った経緯が書かれているが、様々なところで発表していたシン・ニホンの話を、ひとまとめにしたものというのがなかったそうで、担当の方の熱意にも動かされながら、本書が発売されることになったそうだ。

 本書の構成は以下のようになっている。

1章 データ×AIが人類を再び解き放つ
2章「第二の黒船」にどう挑むか
3章 求められる人材とスキル
4章「未来を創る人」をどう育てるか
5章 未来に賭けられる国に
6章 残すに値する未来
(シン・ニホン p7-p18より抜粋)

 情報通信技術が加速しながら発展している現在において、世界と日本を比較した場合に、日本がどういう状況におかれていて、どういう差があるのか。その差をみたときに、絶望するだけでなく、希望を持ち、日本を変えていくためには具体的に何が必要なのか。それらについて、安宅さんの考えたことが本書にまとめられている。
 本書の内容は多岐にわたっているため、このレビューでは、最も自分の印象に残ったところだけを述べるにとどまる。

 自分が最も感銘を受けたのは、これからの時代に価値として認められることは、未来への期待感を創ることという部分だ (細かい言い回しは少し違った気もする...)。どういう会社でも多かれ少なかれ、社会の何かしらの問題解決を担い、ビジネスを行なっているはずだ。しかし、それが大きく評価される会社もあれば、あまり目立って評価されない会社もある。あるいは、面白いとか、面白くないとか、そういった言葉で表される場合もあるだろう。それは個人レベルでの話でもあって、活きの良い人もいれば、パッとしない人もいる。そうしたことは、誰しもが当たり前だと思うだろう。では、そうした違いを一言で説明できるだろうか?それを、期待感の違い、という、簡潔でとてもしっくりくる言葉であらわせるところに、著者の賢さを感じた。

 アインシュタインの名言で、「手段は完璧になったのに、目的が不明瞭になったのがこの時代の特徴です」というのが記録されていたと思うが、そういったことは現代でも頻発していると思う。本書でも、現代の様々な技術革新について触れられているが、そういった技術を理想なく、会社に移入してもあまり目立った成果には繋がらないだろう。また、個人レベルで会社内あるいは会社外でも、何かしらの行動をしたいというときに、単に技術を身につけようとか、資格を得ようとか、そういうことをやるだけでは不十分で、じゃあそうした技術なり資格なりを使って、どういう風に未来への期待感を高めたいか、どういう風にしたら、世の人の未来への期待感を高められるか、というところに結びつけていないと、とてつもなくマイナーな変化に終始してしまうのだろう。そういったことを避けるために、周囲の人、世の中の人がもつ、未来への期待感をどのようにしたら高められるのか、ということを意識するのは、めちゃくちゃ大事で、常に意識していないとダメなことだなと感じた。

 こうしたこと以外にも本書は、現状に満足せず、何かを変えたいと思っている人にとって、変化を創るための考え方がまとまった本だと思う。と同時に、本書に詰まった熱量を感じることで、その変化を起こすための勇気をもらえるような本でもあるのではないだろうか。