おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

渡辺正裕著「10年後に食える仕事、食えない仕事」

 先に読んだ「21世紀の新しい職業図鑑」と比べると、読み応えがあった。これは「21世紀の新しい職業図鑑」が内容的に劣っているというよりは、想定している読者や本のそもそものコンセプトの違いだろう。本書は、AIやデジタルテクノロジー、ロボティクスの進歩により、どのように仕事が変化していくだろうか、ということを解説している。本書の良いところは、巷でいう、「シンギュラリティーによって現在ほとんどの仕事がなくなってしまう」といった主張を曖昧な誇大広告だと批判し、どういう分野でAIやデジタルテクノロジー、ロボティクスが強くて、逆にどういう分野で人が強いかを考察し、具体的にどういう仕事がなくなっていくか、あるいは成長していくかを書いているところだろう。また、技術の進歩により、確かに一部の仕事がなくなってしまうかもしれないが、その代わりに新しい仕事が生まれ、きちんと勉強を続けていく人にとっては、雇用自体はなくらないよね、と説明しているのも良いところだろう。全体的に、「シンギュラリティーによって現在ほとんどの仕事がなくなってしまう」というところをスパッと批判していて面白かった。
 
 本書では、人が強い仕事の条件、自動化の3条件として以下のようなことを挙げていた。

人が強い仕事
1. 創造
2. 感情
3. 信用
4. 手先
5. ボディ


自動化の3条件
1. 必要な情報をデジタル取得できる
2. 指数的爆発が起きない範囲である
3. 執行可能な環境と身体性がある


(本書の第1章から抜粋)

 こうしたことを元に、本書ではまず既存の仕事を、1. ロボティクスの発展により機械に置き換わる可能性が高い仕事、2. AI・ブロックチェーンの発展により機械に置き換わる可能性が高い仕事、3. 人の手による業務が残りそうな仕事、4. AIやロボットの使用により、人の価値がより高められそうな仕事に分類し、その理由やそこに含まれる仕事について解説している。そして、後半では、そういった変化がどれくらいの時期に訪れそうか、その理由は何か、そうした変化に抵抗勢力となるのはどのような人か、といったことまで話が進んでいく。本書でも書かれているが、こうした話は是非これから職業を決めるような人、キャリアをスタートさせた人が読むと非常に得るところが多いと思う。

 また、本書は本のデザインも素晴らしい。このブログでもいくつかビジネス書を取り上げてきているわけだが、本書を取って読んだ時に感じた、とても読みやすい!、という感覚は少なくともこれまで無かった。普段はそんなことしないわけなのだが、デザインを行った人の名前をググってしまった(鈴木聡子さんという方が装丁、デザインをしているようでした)。