おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

佐藤可士和著「佐藤可士和の打ち合わせ」

 佐藤可士和さんというと、広告が専門でない自分でも、テレビなどでその名前を聞いたことのある有名人だ。一応、wikipediaで佐藤さんについて調べてみると、これまでにユニクロ楽天のロゴや、SMAPのCDジャケットなどをはじめとして、他にも有名企業やテレビ番組など、手がけたことのあるものがずらっと出てきた。非常にプロダクティブな方だ。本書では、その佐藤さんが自身の打ち合わせについて解説した本だ。

 本書ではまず打ち合わせという言葉の定義から始まる。会議は、議論し尽くされたものをプレゼンし承認を求める場所。そして、打ち合わせは、会議に乗せる前段階のすべてのプロセスで、自由に考え議論し想像力を働かせる場所、と定義して話を進めていく。

 本書を通して感じられるのは、佐藤さんの打ち合わせに対する熱量だ。これは本書内で、打ち合わせは真剣勝負の場である、というように書かれていることからも分かる。なぜ佐藤さんは打ち合わせにそこまでこだわるのだろうか。それは、佐藤さんは、打ち合わせこそが、仕事の創造性を高め、成果物のクオリティーに直結する作業と考えているからだ。

 本書では、そうした佐藤さんの打ち合わせに対する哲学を感じられるとともに、真剣勝負である打ち合わせを成功させるための様々なTipsが紹介されている。それは例えば、本音で当事者同士が語り合えるように、初期段階では参加者の人数を制限することや、誰に何を聞くか事前準備を行いイメージをしていくこと、あるいは、あまり見込みがなさそうな展開の時には予定時間よりも早く切り上げることなどなど。細かいところなどでいうと、お出迎えやお迎えの仕方、出す飲み物への工夫なども書かれており、そんなところまで考えているのかと勉強になった。これは、創造的なプロジェクトを行なっていくためには、理屈だけでなく、当事者の心の状態も大事だと考え、創造的な打ち合わせができるような場作りを徹底的に行う、という哲学が反映されているのだろうと思う。

 本書を読んでみて、自分自身が日々仕事で行う打ち合わせのレベルは、とても低かったなと、反省したし、恥ずかしいなと思ってしまった。自分自身が打ち合わせを主体的に行うときに、当然準備はある程度していくが、それは話す内容や聞きたい内容などのみで、参加者の心意気が上がるような、場作りまでは意識できていなかった。佐藤さんの打ち合わせのTipsを全部すぐに取り入れるのは、なかなか難しそうに感じるが、少しでも近づけられたらなと本書を読んで感じた。