おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

チャールズ・A. オライリー、マイケル・L. タッシュマン著(入山 章栄監訳・解説)(冨山和彦解説)(渡辺典子訳)「両利きの経営」

 経営について書かれている本を読むことは、今現在経営に携わっていない人にとっても特があると思う。それは例えば、自分の所属している会社やライバルの会社がどのような方針で経営されているのか分かりやすくなったり、あるいは、現場レベルで様々な提案をする際にも、ひと味違った提案をしやすくなるのではないかと思う。また、個人レベルのキャリア戦略にも、何かしら活かせる部分があると思う。そういう意味もあって、当ブログでは経営戦略などのビジネス書も取り上げている。

 「良い人材や資金もある大企業が時代の変化についていけず、没落してしまう理由は何か?」、この問いに対する答えを著者たちがまとめたのが本書だ。著者たちは、多くの企業の事例分析から、何十年あるいは100年単位で存続している企業には、事業を「深化」させる面と「探索」する面の二つが備わっていると指摘する。一方で、変化についていけない企業は、過去の成功体験があるがゆえに、その経験に縛られ、全く新しい可能性を探索できず、適応できないのだと指摘する。

 「深化」と「探索」、この二つのキーワードをもとに、本書の話は進んでいくが、後半では、この二つを両立させることの難しさや必要なことは何か、といったより具体的な話に入っていく。興味深かったのは、「深化」を行うために有益な組織体系と、「探索」を行うために有益な組織体系は異なり、また、求められる考え方も異なっているという点だ。そのため、せっかく「探索」を行いたいと思っても、既存事業の組織体系や、既存事業で求められる考え方のまま進めてしまえば、結局うまくいかない、ということも指摘されていた。

 冒頭でも触れたけど、本書で述べられているような「深化」と「探索」の両面が重要だという話は、何も経営に携わっている人だけでなく、個人レベルの問題においても当てはまるのではないかと思う。新しいスキルを常に身につける気持ちのない人は、どれだけ既存のスキルが高いものであっても、時間が経てば陳腐化してしまうものだ。今のスキルを磨くということもそうだけど、新しいスキルを磨く、あるいは新しいスキルを今のスキルに結びつける、などしていくことが重要だというのは、個人の生き残り戦略においても当てはまるのではないかと思った。