おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

川原慎也著「今度こそ実践できる!最強のPDCA」

 PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字に由来したもので、業務の改善を行うためのフレームワークとして有名だ。PDCAを解説したビジネス書はとても多いが、それだけ需要も多いということなのだろう。そして、PDCAサイクルを解説した本の需要が多いというのは、簡単にみえるPDCAサイクルも、実は難しいものである、ということなのだろう。

 本書もPDCAサイクルをとりあげた本だ。本書の特徴は、PDCAサイクルの概念を解説した本というより、実際にPDCAサイクルを回していく上で大切なことは何か?という点が特に強調されていることだ。このあたりは、本書でも触れられているが、PDCAサイクルはPlanを立てるよりも、それを実際に行なって、PDCAサイクルを回していくことが難しい、という著者の思いが反映されているのだろう。また、実際に著者はそういった文脈でのPDCAに関するアドバイスを、企業関係者から求められることが多いそうだ。本書の他の特徴としては、最近のビジネス書の流行りにのって、本書にもページごとに漫画が挿入されていて、文字だけを追っていくのが辛い人にも読みやすい構成になっているところも挙げられるだろう。漫画が挿入されているビジネス書の中には、さわりだけ漫画で、ビジネス用語の解説になると文字ばかりになってしまう本もある中で、ほぼ全てのページに漫画かなんらかの図表が挿入されていて、読む大変さというのがとても少なくなるようにデザインされていたと感じた。

 本書のはじめの方で、現場やマネージャーレベルの人だけでなく、より上の人こそ、PDCAサイクルを回さなければならないという部分がある。この部分が非常に重要なのではないかと読んでいて感じた。というのも、本書で書かれている漫画の中では、PDCAを積極的に取り入れる管理職の方がいるからこそ、良い結末を迎えるに至ったのではないかと思うからだ。実際には、現場レベルだけでやろうとしても、なかなか理解を得られなかったり、日々のルーティンの業務の中に埋もれていってしまうことが多々あるのではないかと思う。そういう意味では、本書は入門書のようないでたちをしているものの、いわゆる偉い立場にある人にこそ本書は読まれるべきではないかと思った。あるいは、現場レベルで何かしらの改善をしていく際には、より上の立場の人を巻き込む重要性というのも、本書から読み取れるように感じた。