おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

三菱UFJリサーチ&コンサルティング著(吉田寿執筆)「リーダーの器は「人間力」で決まる」

 ビジネス書やそれに準ずるwebページをみていると、人間力という言葉をたまにみかける。また、実際にそういう言葉を好んで使う人にも稀にお会いする。そうした際に、結局人間力ってなんなの?、という思いをいつも持っていた。そこで、いかにも人間力について語っていそうな本書を、ひとつ手にとってみることにした。

 本書ではまず、ビジネスの現場だけでなく、スポーツなど他の分野で活躍している人も含めて、際立った成果を挙げている人には人間力の高い人が多いと紹介する。様々な例を挙げた後で、人間力として挙げられるような共通の要素について考えていく。そして、その中でも特にビジネスにおいて重要な要素にはどのようなものがあるか、について話を進めている。人間力、という文脈では行われていないものの、ビジネスに必要なスキルにはどのようなものがあるか、という研究は学術的にも行われているようで、そうした話とのつながりも紹介されていた。

 読み終わってみると、結局人間力ってなんなの?、という問いに対する答えは得られなかった。だが、この問いに答えが見つからない原因については、少し理解が深まったように思う。人間力と称される事柄の中には、上司や部下、同僚への接し方だったり、決断を行う際の大局観やスピード感だったり、自分の考え方に磨きをかけるための努力を惜しまないような姿勢であったり、あるいは、それぞれの仕事に必要なスキルへの理解だったり、捉え方によって様々なものがある。今列挙した事柄以外のことも当然あるだろう。そして、そうした事柄の一つをもっていれば良いのかというとそうでもない。全てが平均的ではパッとしないが、何かに特化しているだけでは人間力がある、ということにはならないのだろう。

 ふわっとした言葉でようやくするなら、人間力は、この人と一緒に仕事をしたいと思わせる何か、ということだと思うが、結局じゃあどういうことが身につけば人間力がついたといえるのか、というのは、必要な要素が多すぎて一言ではまとめられないのだろう。もしくは、人間力という言葉を使う人ごとに、思い描いている場面があって、それにフィットしたスキルを持っている人物について、人間力があるということは可能なのだろう。

 一つ思ったのは、人間力がない人、というのを逆に考えてみると、仕事を一緒にしていてもなんだか仕事をしたくない人、といいかえることが出来ると思う。そういう人を思い浮かべた時に、コミュニケーションがあんまり良くなかったり、仕事を頼むに足るスキルを持っていなかったり、色々な場合を考えることが出来ると思う。人間力を高めたい人は、自分自身がそういう人にあてはまらないように普段から気をつけていく、というやり方が分かりやすいんじゃないかなと思った。