おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

林總著「成果が出ないのは、あなたが昔の「燃費の悪いアメ車」な働き方をしているからだ」

 本書はドラッカーの考え方についての入門書という本だ。架空の病院の経営を題材に、知的労働者の生産性、営利組織と非営利組織の共通点といったポイントが解説されている。病院は患者のために医療を提供するべき場所で赤字であっても仕方がない、儲けを第一にするのは間違っている、という考えの主人公三郷大輔が、ひょんなことから会社経営のプロである西園寺と知り合ったところから本書は始まる。病院は本当に赤字であっても構わないのか、赤字を解消するために本当に効果的な方法は何か、経営状態をむしろ悪化させる技術革新とはどのようなものか、経営改善のために忘れてはいけないことは何か、等々。少ないページ数やあまりにキャッチーなタイトルからは想像できないくらい良い内容が書かれていたと思う。

 実際には、ドラッカーの本や、ドラッカーの考え方を引用した他の本でも、同じようなことが書かれていると思うのだが、本書の良さとして、わかりやすさが挙げられる。架空の話ながら、実際に問題として上がってきそうな事柄を題材にドラッカーの考え方を使えば、どのように見方を変えられるか、という点がスラスラと入ってくる。これには、ドラッカーの言葉をやたらとたくさん引用するのではなく、少数にしぼっているため、本書がわかりやすい印象なのだと思う。

 個人的には、技術革新が経営状態を悪化させることもある、という部分の話が面白かった。当たり前の話だが、より高度な機械を使うようになれば、それを扱う人の知識や技術も高度になってくる可能性がある。また、保守費用なども効果になるかも知れない。本書の場合では、よりよい医療機器を入れれば、患者さんによりよい医療を提供できるようになり、患者さんが増え、結果的に病院の経営状態の改善に貢献できるはずだ...、としていたところが、稼働率などを考えると、誤りであった、という話が作られている。文字にしてみるととても当たり前のことのように思うが、誤ったイノベーションの捉え方のまま改善をやって、失敗している会社というのは実は沢山あるんじゃないかと思う。