おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

丸幸弘著「ミライを変えるものづくりベンチャーのはじめ方」

 とても面白い本だった。ここ最近読んだ本の中で上位にはいる満足度だった。ものづくりベンチャーをやっていくには、すさまじい熱意が必要だと思うが、そういった現場で過ごす著者や、そういった現場の熱量が込められているような本だと思った。特にベンチャーをやるよう予定は今のところ自分には全くないのだが、この本から伝わってくるそうした熱量によって、日々の仕事に前向きになれるような気がした。

 本書は株式会社リバネスを経営する著者が、ものづくりベンチャーを立ち上げ成功させるには何が必要かについて、これまでの経験を背景に考えをまとめた本だ。リバネスを浅学にしてあまりよく知らなかったのだが、公式のホームページによると、教育応援プロジェクト、人材応援プロジェクト、研究応援プロジェクト、創業応援プロジェクトを柱に、「科学技術を発展させ、その力を社会に実装する」ことをミッションとして、事業を行なっている会社だそうだ。本書の中でも、著者やリバネスがコミットしてきたベンチャー企業が例に出てくる。そういったものの中には、ミドリムシで有名なユーグレナなどが含まれている。

 目次は以下の通りであった。

第1章 「解」は転がっていない、だから一緒に考える
第2章 「最強軍団」を集める!
第3章 視点を変えると、ベンチャーは動き出す。
第4章 負を長所に変える!
第5章 「if」を常に考えて動く
第6章 マイルストーンを考えた賃金手当の極意
第7章 シリコンバレーで本物を知る
第8章 フィニッシュを考えてスタートしよう
(本書 p7-p12より抜粋)

 どの章も読みごたえのあるものだった。様々な学びがあったが、個人的に勉強になったのは、創業者のビジョンに関する記述だ。ベンチャーは技術があるから、それを何かに活かしたい、というようなスタート地点ではあまりうまくいかないだろうと著者はいう。そういった微熱的な発想では駄目なのだ。そうではなく、その前に解決したい課題、例えば貧困を世の中から無くしたい、とかそういうものがあり、そのあとに初めて、ビジョンを実現するための技術があるべきだという。もちろん、これは技術を軽視しているというわけではなくて、画期的なことをするための技術作りにも大きな困難や様々な発想が必要になるということは前提してある。ただそれだけではなくて、そのベンチャーをつくることで何を成し遂げたいのか、という明確なビジョン、そしてそれに対する情熱、そういったものが絶対に必要だという。困難な課題が頻発するものづくりベンチャーであるからこそ、そうした事業を行うための基礎がしっかりとしていけないということだろう。

 他にも、「課題を解決できるど真ん中の研究者なんていない」、「自分を成長させたいという人よりは、ビジョンに共感してくれる人を選ぶべき」など、他にも面白いなとおもう考え方が随所に散りばめられていた。そして何より、冒頭でも述べたが、この本には溢れ出る情熱が感じられた。そういう意味で、ものづくりベンチャー起業を考えていない人でも、ぜひ読んでほしいビジネス書だなと思った。