おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

デービット・アトキンソン著「日本人の勝算」

 本のタイトルだけ見ると、少し品性の劣った、あまり読むべきでない本の仲間にもみえるが、本書はそういった本ではなく、経済学的な視点の本で学びの多いものだった。本書の著者は、有名な銀行で戦略の立案や分析を行っていたそうで、本書にもそうした経歴が活かされていると感じた。経済学分野の最近の論文を読み込み、日本のおかれた状況や、今後どのように日本が進んでいくことが良いのかをまとめている。

 様々な問題に日本は直面しているが、本書で取り上げる問題は少子高齢化と人口減少だ。特に経済の観点から、この二つがデフレを促進する強い要因になっていることを指摘している。日本は金融緩和をはじめとしたデフレ対策を行っているが、この二つのデフレ要因は強力で、これを解決せずに金融緩和単独だけではデフレを抑えることは出来ないだろうと著者はいう。また、少子高齢化は日本以外の国々でもみられるが、少子高齢化と人口減少の二つが同時に起こっている国は、日本だけだという。

 日本が少子高齢化と人口減少によるデフレ圧力に負けず、デフレから脱却するためには、賃金の向上が必要不可欠であるという。また、賃金を上昇させるためには、生産性の向上が不可欠であるという。著者は、日本には生産性を向上させる余地がまだまだあることを指摘し、具体的にどのような余地があるのかも本書で解説していく。残念ながら自分があまり経済学に通じていないので、このあたりになってくると批判的に読むレベルでは読書できなかった。例えば著者は、日本には小さな企業が多すぎるため、もっと統合されるべきだ、と指摘し、その根拠となる論文も引用しているが、それとは異なる意見の論文などが本当にないのか、それらの論文の解釈はあっているのか、など、経済学に詳しい人がこれらの意見をどのように読むのかは気になるところだった。

 個人的には、日本の置かれた状況として、少子高齢化よりも人口減少がより問題なのではないか、という意見は知らなかったので、非常に勉強になった。