おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

大内伸哉著「君の働き方に未来はあるか?」

 あまり、法律についての本というのは読んだことがなかったのだが、ひとまずこのブログをやっていくにあたって、目についたビジネス書っぽい本は手当たり次第に読んでいこうと思っていたので、本書も手に取ってみた。

 本書は、労働法を専門とする著者が、会社員の働き方について労働法の観点から考察をしている。特に、正社員として会社で働くことについて紙面が多く割かれている。本書の章末によると、著者が自身のゼミの学生をみていて、学生がもつ正社員への憧れや、仕事のための技能は、就職してから身につければいい、という考えに触れるなかで、色々思うところがあって、本書をしたためるにいたったらしい。本書の結論として述べられているのは、正社員として働くにしても転職力を高めていくことが大事、実際に転職をすぐにしないとしても、他社が欲しくなるような人材になることが重要だ、ということだ。こうしたことは、何もこの本だけに書いてあるわけではないが、労働法の観点から見ても、そういう道が良さそうだ、という結論に著者もいたったということは、知っておいて損はないことなのだろうと思う。また、法律に期待しすぎるのではなく、ブラック企業からは労働者が自分で逃げるのが一番だ、というのも、当たり前のことではあるが、改めて大事なのだなと感じた。

 法律のことについてあまり見識がなかったので、法律への過度な期待というのを自分が持っていたのかな、ということを本書を読んで感じた。例えば、ブラック企業を取り締まるために、罰則を強くすれば良いじゃないか、というのは素人考えとして思い浮かびがちだが、実際にそれを行うと罰則を適用するハードルが上がってしまう可能性もあるという点。また、正社員の権利を強めるような方向に法律が改定されれば、正社員へのハードルは高くなり、結局競争が過激になる可能性もある、という指摘など。いくらか経営者側の意向に忖度しているのではないかと邪推してしまうところもあるが、基本的にはグローバル化で競争が激しくなっていくなかで、何もせずに権利だけを享受したいというような姿勢ではうまくいかない、という指摘には同意する。法律でいくら何かをいったとしても、大きな流れは変わらない。だから、個人としてできることは、魅力あるスキルを持った人物になることだ、というのは、厳しいようだが現実にはそういうものなのかも知れないなと改めて思わされた。

 あるいは、自分に納得感がないブラックな職場からは、俊敏さを持って離れていくことが大事。基本的には仕事をやめる権利を労働者は持っているので、どうしてもやめられないと思っている人は、法律の専門家に相談するのが良い、というのも勉強になった。