おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

岩田松雄著「「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方」

 ザ・ビジネス書という感じの本だった。本書は、スターバックスでCEOをつとめられた岩田さんが、リーダーシップについて語った本だ。リーダーシップというと、何か特別に目立つ人の持つ素質のように思う人もいるかもしれない。しかし、著者はそうではないという。必ずしも、俺についてこい!というような人物でなくとも、リーダーになれるという。むしろ、なろうとしてなるのではなく、まわりに推されてなるのが良く、それこそが理想のリーダー像だという。

 本書では、51のトピックをあげ、様々な場面でのリーダーのあるべき振る舞いを語っていく。面白かった項目はいくつかあるが、その中でも、ザ・ボディショップの時に、マネージメントレターを毎週書いていたというエピソードだ。実際に顔をあわせることが難しい、現場の人にまで、社長の気持ちを届かせるために、そういった努力をしていたというのは、勉強になるなと感じた。
 
 ただ読後感としては、なんだか"きれいな話すぎるな"、という気がしてしまった。なんというか、生存者バイアスというか。地位が上がれば上がるほど、人間学が大事、というのには同意なのだけど、それだけでは駄目なんでしょう?と思ってしまう。どれだけやる気と愛情があって一生懸命な人でも、経営の能力とか分析能力とかセンスがなければ、やはりうまくいかないんじゃないだろうか。著者の場合には、そういうものを意識せずとも発揮できるから、人間学の話をむしろ大切にしている、とかいう話ではないのだろうか。実際に、本書の中でも、社長に就任してから3ヶ月くらいで、その業界のことを把握すべしと書かれているが、それはある程度実務の能力やサポートしてくれる仲間に恵まれないと、できないのではないだろうか。名刀を持っていても、どういう風にそれを扱うかが大事、という話をしているように思えるが、多くの人には名刀がないのではないのだろうか。あるいは、名刀である誰かの助けをかりて、うまくやっていくのに人間学が必要、という道もあるのかも知れないが。

 もしくは、そういうことは当たり前に著者も自覚しているけど、私はそんなに人と変わらないですよ、という簡略なメッセージの方が、分かりやすく、本も書きやすいという目論見があるのだろうか。いずれにせよ、そういうところで物足りなさを感じる本ではあった。