おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

菊入みゆき著「会社がイヤになった」

 「会社がイヤになった」というタイトルをみて、本書からどのような内容を想像するだろうか。少なくとも、自分は初めにタイトルをみて思い浮かべたことと、実際に本書に書かれていたこととはかなり違った。

 本書では、20-60代の架空の社会人を例に、仕事におけるモチベーションが変化するような出来事を取り上げている。その後、より一般的な話として、心理学やモチベーション調査の結果から、モチベーションが年齢や性別ごとにどのような傾向をもって変遷するのかを解説している。物語とその解説を読むことを通して、読者が自らの悩みを客観視していくことに役立ちそうな内容だ。

 本書の内容は、仕事のモチベーションが下がっている人だけでなく、様々な立場の人をマネージメントする役割を担っている人にも有益なのではないだろうか。もちろん実際には、その人ごとにモチベーションの違いがあると思うが、年齢、性別ごとのモチベーションの傾向をおさえておくのは、大事なことのように思う。

 個人的には、20代のモチベーションで「人間関係」が大きな影響力をもったあと、30代、40代では他の要素が重要視されるようになり、50代では再度「人間関係」を重要視するようになってくる、というように、モチベーションが年齢ごとに変遷していくというのはとても面白いなと思った。同じ組織や同じような分野で仕事を続けていても、それぞれの人の立場の変遷、成長に合わせて、ダイナミックにモチベーションが変わっていくというのは、あまり考えたことのないことだった。会社での若者と年配者のコンフリクトには、こういったところにあるモチベーションの違いというのもあるのかも知れないなと思った。

 本書の物足りないところといえば、もう少し実際のデータや学術的な見解について紹介して欲しかった。ところどころ、著者の意見なのか、ある程度学術的に認められていることなのか、よくわからない書き方のところもあった。新書だからあくまで導入で、興味のある人は専門書を読んでね、といわれればそれまでなのだが、そのあたりが物足りなかった。