おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

NPO法人ファザーリング・ジャパン著「新しいパパの働き方」

 子育てのために働き方を変えるのは、少なくとも自分の場合は悩んだし決断力も必要とした。いろいろな原因があると思うが、そうであった理由の一つは、自分が以前働いていた場所では、子育てと仕事を両立している同性(男)のロールモデルを見つけられなかったことがあると思う。そのせいで、悩みを相談できる人がいなかったり、また、職場の人が子育てと仕事を両立したいという自分の気持ちを心から理解出来る訳がないと思っていた。そのため、徐々に孤立し、余計に苦しさが増す、という様子であった。若い人が多く占めている今風な会社であったり、働き方の支援に前向きな会社で働く人の場合には、当てはまらないのかもしれないが、そうではない場所で働いていて、子育てと仕事の両立に悩んでいる、特にパパにとって、本書はひとつの手がかりになるのではないかと思う。

 本書ではまず、仕事と育児の間で悩んでいるパパ達について触れている。パパ達がどのような悩みを持っていることが多いか、という部分を読むだけでも、実際に仕事と育児のバランスで悩んでいるパパにとって、自分の悩みは同じような境遇の他の人も悩んでいることだ、ということに気づけるだろう。

 この本ではそこから、仕事と育児のバランス別に、仕事や育児の仕方を例に沿って紹介していく。仕事と育児をどっちも上手にやりたいといっても、そのバランスは人それぞれだと思う。本書で紹介されているような様々なバランスを知ることによって、自分の理想のバランスを決めていくヒントになるのではないかと思う。バランスごとに、職場や家庭で何を得られるか、何に注意するべきかが分かりやすく書かれていた。これらを読んで思うのは、仮に仕事に力点を置いたとしても、あるいは育児に力点を置いたとしても、あるいはその中間だとしても、どのようなバランスになるにせよ、何かしらの悩みはやはり避けられないのだなというところだった。どういうバランスにしても一長一短があり、むしろそれを知って、大きな問題が起きないようそれぞれに事前の環境整備をしていくことが大切だなと感じた。

 また本書では、子育てを介したパートナーとの関わり方についてもアドバイスが書かれている。いくつかのチクリとする例文集が書かれていたが、自分にも思い当たるものがあったりして、複雑な気持ちで読み進めることができた。

 ひとつ物足りなさを挙げるとすれば、本書で取り上げられているパパの中には、猛烈に働きながら子育てをしている人のエピソードがないことだ。そういう人はそもそも子育てと仕事を両立できていないとして、この本には登場しないのかも知れない。でも、自分としては、うまく時間やリソースをやりくりして、子育てと仕事を両立している人の話よりは、早朝から深夜まで働いているけど、子育ても両立できている人、のモデルケースを求めていたところがあったので、そういう人の例がないことは少し残念だった。

 ただ、全体的には非常に参考になることが多いので、もし仕事と育児のバランスに悩んでいるパパがいるとしたら、ぜひこの本を一読してもらいたいと思う。あるいは、パパになるための準備している人にこそ必要なのかもしれない。本書を読んだとしても、行動しなければ何も変わらないが、少なくとも読むだけでも、同じような悩みを抱えている人が実は近くにもいるかも知れない、と気づくことができると思う。