おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

グロービス著(佐藤剛執筆)「組織マネジメント教室」

 塩沼良順大阿闍梨について調べているとき、Youtubeで塩沼さんの講演動画をみつけた。その講演動画をアップロードしていたのがグロービスで、グロービスという会社はそこで初めて知った。グロービスは、ビジネススクールの運営や個人・法人向けセミナーを行なっているようである。公式HPには、以下のようにミッションが掲載されている。

 グロービスは、経営に関する「ヒト:経営大学院の創設 企業内リーダーの育成」「カネ:ベンチャー企業への投資」「チエ:経営ノウハウの出版・発信」の生態系を創り、社会の創造と変革を行います。

 「組織マネジメント教室」というタイトルの本書では、そもそもなぜ人は組織を作るのか、というところから、企業における組織マネジメントを解説している。本書の特徴として、基本的な用語の意味をきちんと定義し、その定義に基づいて話が進めている。こういうことは当たり前のことだが、その辺りがきちんとしているのでとても読みやすい。ビジネス書を読んでいるというよりは、教科書を読んでいるような気持ちで読み進められた。

 会社である程度働いていると、組織はどうあるべきか、組織の中でどう生きていきたいか、ということを考えたくなると思う。そうしたとき、組織にまつわる用語の意味や機能を整理することは、考えをまとめ、新しい理想を描くのに役に立つと思う。原則として組織はどうあるべきで、欧米型の組織や日本の組織がそれぞれどのように違うか、といったことがまとまっている本書は、組織運営や組織での生き方に悩んでいる人の助けになるような本ではないかと思われる。ただこれは、様々な人の多種多様な悩みをまるっと解決するようなことが書かれている本、ということではなくて、組織を考えるためのものさしを提供してくれるような本、という意味だ。

 全体を通して読むことで、組織のマネジメントに関わってくる事柄を整理できるように思う。ただそれだけではなくて、警句めいたものも時折あり、反省を促されるような言葉もいくつかあった。「一度強い商品を持った組織は、その後その商品にこだわるあまり、変化を行えなくなりがち」、「コアテクノロジーの変化に合わせて組織形態も変わっていくべき」、「やりたい仕事があれば自分から手を挙げてチャレンジし、それを達成するためのスキルが自分にないのであれば、自ら外で学ぼうとします。自分のキャリアプランは自分で作ることが大前提です。」これらのことは、言われてみると当たり前のことが多いのだが、実際に実践できているのかと言われると耳が痛いようなこともある。そういうことを振り返る契機として本書を読むことも出来るだろう。