おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

三木雄信著「孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA」

 本書で主張されていることは非常にわかりやすかった。ソフトバンクが短期間に非常に大きな成長を成し遂げられたのは、他とは少し違ったPDCAサイクルを回していたから、ということだ。何点かそういった他とは少し違う部分、というのが本書でふれられているのだが、自分が一番印象に残ったのは、ソフトバンクは一つの課題について、複数の解決策を同時並行で試していく、という部分だ。

 多くの会社では、PDCAサイクルのPlanの部分で、これはいけそうだと思える一番良さげな案を実際に試してみて、それに対して実行とフィードバックを行なっていくことが多いだろう。しかしこれでは、そのプランがダメだった場合に、改めてPlanを作り直す必要がある。また、この方式の問題として、一番良さげな案を選別するためには、いくつかの会議を通したり、場合によっては検証するためのデータをとったりして、時間が必要になってくる。そもそも、そうして時間をじっくりかけて作り出したアイデアが、複雑化していく世の中において、本当に正しいのかどうかは、やってみないと分からないというところもある。あるいは、ハズレのないように、Planを選ぶせいで、一見ただの突拍子のないアイデアに見えるが、実は非常にクリエイティブなアイデアが、選別の過程でボツにされてしまう可能性もある。

 一方で、一つの課題について複数の解決策を同時並行で試していく、という考え方では、可能性のありそうなPlanを全て同時並行で進めていく。これにより、Planを回すためのコストがそのぶん必要になるものの、Planを生み出すための検証コストを必要最低限にし、PDCAを、Planを絞った場合よりも素早く回していくことができる。こうした考えは極めて現実主義的であると同時に、先入観でクリエイティブなアイデアをダメにしない方法でもあり、勉強になるなと感じた。

 また、フィードバックは毎日行う、大きな目標はナンバーワンになること、目標は数値で設定すること、というのも面白い点だと感じた。こうした部分はほかのところでもやろうとしているのであろうが、それにどれだけこだわれるリーダーがその会社にいるかで、全く結果は違ってきそうだなと感じた。

 本書でp72で触れられていた孫社長の戦略も目から鱗だった。「自社が優位性を獲得できる可能性のある市場を探索・選択し、その優位性を確立するためのヒト・モノ・カネ・情報の経営資源を交渉によって短期間に調達し、一気にナンバーワンを目指す」というのは、仕事を何のためにするのか、本業にこだわることが最も重要なのか、というような問いに対する、非常に現実主義的な一つの答えだなと感じた。