おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳)「デザイン思考の教科書」

 本書ではハーバード・ビジネス・レビューにおいて、デザイン思考をテーマに書かれた論文のうち、読むべき10本と題されたものが集められている。10本の論文を読むことで、デザイン思考をどのように展開していくことができるか、デザイン思考を広めていく上で障害となりうることは何か、デザイン思考が実際にイノベーションに結びついた例はあるのか、などの疑問に答えられるようになる。個人的には、製品自体のイノベーションの重要性だけでなく、出来た製品を受け入れてもらうためにする準備の重要性について、という論文が面白かった。

 ただ本書を読んでいても、肝心のデザイン思考って結局なんなの、というところは、もやっとしたままであった。各論文の著者はデザイン思考の知識を前提に話を進めており、デザイン思考とはかくかくしかじかなものである、とデザイン思考を定義づけしてくれるような部分は全くない。せめて編集した人たちがそういったところに配慮してくれると良かったのだが。

 最近、富士通のデザイン思考戦略が公開された。こういったものも読んでみると、デザイン思考が分かる気がした。
www.fujitsu.com
 デザイン思考、という言葉のわかりづらさは他の人も感じているようで、以下のようなブログ記事も見つけた。こちらも理解の助けになった。
blog.btrax.com

 こういったwebのリソースや今回紹介している本を読んで、自分なりにデザイン思考を定義してみると、「顧客と会社の理想の関係を考えて(デザインして)、それを具体的に実現するための考え方」と言いなおすのが良いのではないかと思った。ここで重要なのは、一度デザインした理想の関係性というのは、どんどん書きかえられていくべきものだし、考えたことを実現するためのフェーズでは、場合によっては会社のあり方全部を変えてしまうようなスケール感のあることだということだろう。このあたりのことは、今回紹介した本に詳しい。

 個人的には、デザイン思考の考え方というのは、優れた人たちは知らず知らずの間にやっているものだと思うのだけど、それを探り当ててネーミングを行い、パッケージ化して広めていった人も賢いな、と感心した。