おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

加藤雅則著「自分を立てなおす対話」

 組織の中で理不尽な目に会うというのは、会社で生活していれば誰でもある程度直面することだろう。そうしたときにどのように対応していくべきか。それが本書のテーマだ。
 ズバリ本書では、他者との対話を通して問題をほぐすことが重要だという。問題をほぐすとは、一旦問題の解決を忘れて、問題を客観的に眺め、問題を問題たらしめている自分の感情や思考の癖に気づくということである。こうすることで、問題にはまっている当事者が本当に望んでいることや、問題の真の原因がみえてくる。例えば職場で何か問題が発生した時、はじめは職場の他の人が原因だと思っていた問題も、問題をほぐしていくうちに、自分自身の態度を省みる余裕ができたり、気になっている他の人の気持ちを汲む余裕も出てくる。問題の捉え方が変わってくると、その解決策や次にとるべき行動というのは自ずと見えてくるもので、そうすると問題はもはや問題ではなくなっている。そういう問題への向き合い方を、問題のほぐし方、として本書では提案している。
 そうしたことを達成するために、問題に対して自分の気持ちを話して誰かに聞いてもらうことが重要であるという。本書では著者が行なっているセッションでの事例を紹介しているが、そのセッションの参加者が会社への様々な不満を吐露していく過程で、自分の気持ちに気づき、前向きな解決策を自ら見出していく過程はなかなか興味深い。人に話しているうちに自分で気づくというのは、いろんな場面であることだと思うが、会社での理不尽な出来事についても、そういう態度を持っていくことが大事なのだろう。