おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

佐宗邦威著「ひとりの妄想で未来は変わる」

 本書を背表紙で見たとき、この本は、もっと妄想しようぜ!と、働いている人を鼓舞する本かと思った。でも読んでみると違った。確かにそういう面もあるんだけど、どちらかというと、働いている人が妄想しやすくなるような会社の仕組みづくり、実は面白い妄想を既に持っているけど見つかっていない人を生かすような場づくり、妄想を持っている人がその妄想をきちんと生かすための方法論など、を提案する本だった。本書のタイトルは、「ひとりの妄想で未来は変わる」だけど、実際は、「ひとりの妄想で未来は変わるけど、それを生かす仕組みがないとダメだよね」という本だと思った。
 著者の方は、なかなか変わった肩書きを持っている人で、色々なところで学んだり働いたりした後、現在は自分の会社を持っている方らしい。その会社での仕事として、いろいろな会社において、イノベーションを起こすような場づくりを行なっているよう。そういう背景のある方が書いているからか、他のビジネス書でよくあるふわっとした感じではなく、肌感覚のある言葉がみられるから、読んでいて面白かった。
 本書の中では、イノベーションを起こす仕組みづくりとして様々なことが挙げられているが、結局一番大事なのは、そのプロジェクトを自分ごととして捉えている人間がいるかどうか、というのは、まあそりゃそうだよなと思った。ただそこからもう一歩進んで、プロジェクトを進めていく上でそういう人間を増やしていくにはどうしたらいいか、という視点の話があって、そこは興味深かった。
 予想に反して、結構内容のあった本なので、一度読んでさよならの本というよりは、適宜参照していきたい本になった。後、独立した人がこういう本を書くのは、宣伝として効果的なんだろうなとも感じた。