おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

エドガー・H・シャイン著(金井真弓訳、金井嘉宏監訳)「人を助けるとはどういうことか」

 程度や種類の差こそあれ、人を助けるというのは、誰でも日常生活を営む上で当たり前のように行なっていることだろう。しかしそうであるからこそ、人を助ける、というのを真面目に考えだすと難しいところがある。その人のためになると思ってやったことが、そうはならない場合。逆に自分がやってほしいことが今ひとつ伝わっていない場合。その人のためになると本人は思っていても、その支援を受ける側からしてみれば、そういう助けてあげる、というような態度が、どこか偉そうに見えているせいで、支援を拒否される、というようなこともあるだろう。「人を助けるとはどういうことか」という本書を書いた、支援学という学問分野の研究をしている著者でも、日常生活の場面では家族とうまくいかなかったりすることがあった、というところにも、人助けの難しさが表れているように感じる。

 本書では、人を助けることの難しさがどこにあるかを明らかにし、どのようにすれば、私たちはより適切な支援をお互いに行えるようになるか、ということを述べられている。例えば、本書では以下の原則を示し、適切な支援のあり方を考察している。

原則1 与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる
原則2 支援関係が効果的なものだとみなされたとき、効果的な支援が生じる
原則3 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる
原則4 あなたの言動すべてが、人間関係の将来を決定づける介入である
原則5 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる
原則6 問題を抱えている当事者はクライアントである
原則7 全ての答えを得ることはできない

(本文p235-p249より抜粋)

 支援というとなんだか高尚で自分には関係ないという気持ちがしてしまうのなら、誰かと仕事を一緒にするときや、誰かを指導する場合を考えてみたら、この本がより役に立つのではないだろうか。勿論、この本を読んだからといって、誰でもすぐに支援の達人になれるという訳ではなくて、日々の人との関わりをこの本で省みていくのが大切なのだろう。