おすすめビジネス書レビュー

仕事への向き合い方が変わる本を紹介します

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著(櫻井祐子訳)「1兆ドルコーチ」

 グーグルやアップルなど、アメリカの有名な企業のCEOのコーチとして知られた、ビル・キャンベルさんについての本。経営者にコーチが必要であるとは、本書を読む前は全く考えていなかったが、本書を読み終わると、むしろコーチをつけていない経営者はまだまだ甘いのでは、という気持ちになった。それくらいコーチの重要性がわかる本だった。面白かったのは、ビルさんが経営やテクノロジーの専門的なアドバイスを行なっていたというよりは、常に人間的な問題に目を向け、本書で言うところのパワー・オブ・ラブな視点を強化するためのアドバイスを行なっていたと言うことだ。なんとなく時代の最先端を作っている企業というのは、社内の競争も激しそうなイメージだが、そういった組織でも、基本は人間である、というのはふむふむという気がした。
 良い組織を作って、良い仕事をするために、チームや仲間を大切にするというのは、当たり前のことだが、本書を読んで改めて省みることができたように思う。ミーティングの際に、仕事の話から入るのではなく、個人の理解を深めるために、個人的な話題からスタートするということなどは、すぐにでも真似できることだろう。あるいは、仕事はできるがチームの雰囲気を悪くしてしまうような人には、それを改善できそうにないのなら、チームのために去ってもらうという態度は、場合によっては真似するのが難しいかもしれないが、そういった視点を意思決定者が持つというのは大切なことのように感じた。
 ひょっとすると、組織の内部のメンバーだけで、お互いを大切にしようという運動をしても、どこか裏を読んでしまったり、素直に受け取れない面があるのかもしれない。ビルさんの人間的に優れた性格というのが勿論あってこそだと思うが、外部のコーチという立場にビルさんが立っていたからこそ、組織で働く人の人間的な問題を解決していくことに長けていたのかもしれない。